缶のまわりのこと

世界遺産・厳島神社へと続く商店街の一角にお店を構える「喫茶しま」さん。

祖父の代から続く宮島で一番古い喫茶店だそうです。

今回は国内外からたくさんの観光客が訪れる、お店ならではのお話を伺いました。

祖父の時代から続く老舗喫茶店。

自分もここでやりたい！と思う気持ちは？

　全くなかったです。結婚したら宮島から出ると思っていたので、自分でお店をやりたくなったらその時に持てばいいやと。たまたま宮島に住むことになって、主人が「親がいいよって言うなら継いだらいいよ」って言ってくれて。ゆるゆるっとしたお店なので、ゆるゆるっとやればいいかな〜と思っていたら、まぁまぁ忙しいです笑 　

外国人のお客様が途絶えない店内

　外国人観光客の方は宮島で中心となる牡蠣や穴子を食べられない方が多く、そんな方をガイドさんがお店に連れて来られたんです。そういう人たちにターゲットを絞ろうとパンを焼いていて。なので外国人のお客様、特に欧米圏の方が多いですね。

　継ぐからにはケーキも出したかったのでそういう雰囲気のお店にして。母がやっていた時は地元の方が喋りに来ることが多かったんですけど、今では中で食べる方は観光客の方がメインです。地元の方はパンやケーキを買って帰られますね。

　私はパンを作っていた経験がないので独自でやっています。食パンから始まりあんぱん、クリームパン…凝ったものは作れませんが、今は種類もたくさん増えています。

外国人とのコミュニケーション

 注文のやり取りはできるんですけど、英語は全然話せません。せめて聞かれたことに答えるとか、お店で使える英語ができればいいやと思って知人に教えてもらっていました。あとは自分で勉強したりして…メニューも見やすいようにと外国人のデザイナーに作ってもらいました。でも海外のメニューは文字しか無いそうです。

コロナ禍になって変化した環境

　テイクアウトやネットショップはコロナ禍に入ってから始めました。かと言ってネットショップの売れ行きが伸びているというよりは、雑誌に掲載された後や、クリスマスなどのイベント時に瞬間的にバッと売れる感じです。

　そもそも私は現地に行って買って食べて欲しいって思うので、お取り寄せが好きじゃなくて。オンライン始めたのもコロナで東京のお客さんが来れなくなった時に「じゃあ私が欲しいもの買って送ってあげるよ」というのがキッカケなんです。来たいけど来れないっていう人の声に応えたかった。次に来れるようになるまでに、宮島のものが食べれたらと。どうせうちのお店を知っている人しか頼んでこないしとショップを立ち上げて、他のお店の商品もまとめて送ろうとしたんですけど、他のお店は閉めてしまっていたので残念ながらそれは実現しませんでした。

　コロナで島に人が一切来なくなって、お店も一旦閉めたんですけど、島内はお年寄りが多いので外に買いにも出れなくて「ケーキ作らんの？パン焼かんの？」と言われたので開けていました。

お店の統一感はお任せと偶然？

 お店はリニューアルする時にデザイナーさんに任せて作ってもらいました。お店がとにかく狭いので白にして広く見せたり、船のランプになっていたり。レモンをあしらったロゴやパッケージは、また別々のデザイナーさんにお願いしたら、いつの間にかこうなっていました。自分で狙ってやったことが全然なくて。

　新しいメニューもどうしようかという時に、そのまま「コーヒー」じゃ味気無いので「おじいちゃんの深煎りコーヒー」にして、祖父の代からやっているんですよっていう会話のきっかけになるようにしました。

“あまりもの”を”人気もの”に

　缶を使い始めたきっかけはイベントでした。「お花」というテーマでお菓子を作ってくださいって言われて。最初はブーケ缶のピンクに入っていたんですけど、クッキー缶も今ほどブームじゃなかったしなんだか全然売れなくて。余った缶売り切ってやーめよ！と思っていたんです。当時は花型のレモン味のクッキーだけだったんですけど、可愛くないなと思って一個だけ白い花をアイシングで描いたり、レモンも描いて入れてみました。そうしたら確かお客さんがインスタにあげてくれたんですよ。それからバーっと売れるようになりました。今となっては定番商品になり、レモンブーケ缶を求めてお客さんが来てくれています。

　ギフトショーに出た時は、ジャムを売りに行ったはずなのに、みんなブーケ缶を買っていかれました。

これからの「喫茶しま」

　 焼き菓子をもっとやりたい。需要があるのでショーケースも実はお菓子ばっかりにしたくて。あとは思いついたものをその時に作りたい。飽きてしまうので一個のものをずっと作り続けられないんです。商品がコロコロ変わるし、かといってすごい増え過ぎても大変だし、どこからやめようかなとか…笑。どうしたらいいのか常に悩み中ですね。

お忙しい中取材のご協力、本当にありがとうございました！